自己肯定感が下がる職場で消耗していませんか?自己肯定感を下げてくる人への対策は?

仕事は、生きがいにもなれば、ストレスにもなります。家庭よりも過ごす時間が多くなることも珍しくない職場が自分にとってどんな環境なのかは、自己肯定感やQOL(生活の質)への影響も少なくありません。

令和4年の厚生労働省による「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%でした。ストレス内容に関しては、以下の通りです。

  • 仕事の量 : 43.2%
  • 仕事の失敗、責任の発生等 : 33.7%
  • 仕事の質 : 33.6%
  • 対人関係(セクハラ・パワハラを含む): 25.7%

コロナ禍による在宅勤務が増えたからか、対人関係のストレスはやや減少傾向にあるようですが、依然として高い水準であることに変わりはありません。

そこで今回は、職場で自己肯定感を下げてくる人とどう関わっていけばいいのか、考えてみたいと思います。

1.自己肯定感を下げてくる人の特徴

「自己肯定感を下げてくる」と言っても、要するに「嫌だな」と感じる人、話しかけづらい、やりとりしたくないと思わされる人など様々ですよね。誰でも相性の良し悪しはありますし、苦手な人がいない人はいないでしょう。

しかしそれ以上に、その人と関わると心を削られる、元気を吸い取られる感じがする人には、ある程度の対策が必要です。これは「相手を悪い人」認定するということではなく、「自分を守るため」です。どんな人に特に注意すればよいのでしょうか。簡単に特徴を挙げてみます。

1-1.自己肯定感を下げてくる人の特徴①~尊重しない~

まずは、あなた自身を尊重してくれない人です。例えば上から目線の人ですね。上司ならば、立場上の上下はあるにしても、こちらを一人の人間としてみてくれているか、最低限の礼儀を払ってくれているか、ということです。

ある程度のマナーがあれば、双方向的なコミュニケーションになるはずですし、分からないところは質問・相談できる雰囲気があり、何かの責任は上がとってくれるはずです。

それなのに、こちらの意見や事情を考慮してくれず、問題が起きればどう責任取るんだと怒る。そんな対応をされると、尊重されていない、見下されている、認めてくれていない感じがします。

1-2.自己肯定感を下げてくる人の特徴②~口癖が「あなたのために言ってる」な人~

色々厳しいことをいうときに「あなたためにあえて厳しくいうけど」といった常套句もあります。厳しい指摘が有効なのは、それがきちんと伝わるという信頼関係がある、フォローすることが前提ですよね。

そういった前後のケアがないままに、「あなたのため」といえば厳しくいっても免罪符になるように思って、「私のためにならない」アドバイスをしてくる場合も、やはり対策が必要です。

なお、自己肯定感が下がるほどのストレスを受けると、多くの場合まずは体が拒否反応(動悸、過呼吸、腹痛、頭痛など)を出します。これは「心がそろそろヤバいよ」という体(脳)からのSOSです。

体がサインを出していても「これくらいで休んでいたら、申し訳ない」など、色々な理由で結局休めないということもありますが、体をだまし続けることはできませんので、体の声を大切にしていただきたいと思います。

2.対策

では、このような場合は、どう対策すればいいのでしょうか。

基本的な考え方は「やられっぱなしにならない、自分で自分を守るために行動する」ということです。これは「やり返す、仕返しをする」わけではありません。

そもそもそれができるなら苦労はないでしょうし、やり返すと、更に大きな問題になりかねません。では、どんな行動を起こせばよいのでしょうか。

2-1.状況整理、誰かに相談する

ありきたりですが、まずは身近な人に状況を相談しましょう。話をすることで、今自分が置かれている状況を整理できますし、客観的な意見も聞けます。一人で抱え込んでいると、「自分も悪いから」「自分が我慢すればいいだけだから」と自責的な考えにもなりがちです。

また、その時は「you メッセージ」よりも、「I メッセージ」を心がけるとよいと言れます。問題の人を主語にした言い方をすると、悪口になりやすく、その人の悪いところをあげていくと、どんどんイライラしたり、気分が悪くなったりします。

一方、自分を主語にして「私はこんな気持ちになった」「私は、こう言ってくれればまだ受け入れられるのに…」などと、自分の気持ちを話をすると、気持ちがラクになりやすくなります。前者だと、「誤解じゃない?」「気にしすぎじゃない?」と客観的事実かどうかわからないという懸念がでてきますが、後者の言い方だと、客観的事実はどうあれ自分はこう感じている、ということですから、それが間違いとか気にしすぎということはありません。

2-2.言われたことを記録しておく

あまりにストレスフルなことが多いようであれば、簡単にでも記録を取っておくことをお勧めします。後々、上司などに対処をお願いする際にも、具体的な事実として伝えることで説得力が増します。ただ、記録しておかないと忘れてしまいますので、日付と、状況を簡単に書いて、言われた言葉、嫌だったことなどを少しでもメモしておくといいと思います。

また、記録することでどういうときに、どんな言動をされるのか、パターンが見えてくることもあります。傾向がわかると対策も立てやすくなるかもしれません。

2-3.対処できる人に相談する

なるべく、上記の準備をしたうえで、しかるべき対応をしてくれる人に相談をしましょう。当該の人と直接やり取りすると、倍返しになったりしかねませんので、第三者に介入してもらう方がよいことは少なくありません。

また、1対1の関係だったからこそ理不尽な対応をされていたのかもしれませんので、閉じた関係を、開くことで事態が改善に向かうこともあります。問題が起きた時は、自分だけで抱えない、誰かと共有することが解決の第一歩です。

3.まとめ

攻撃を受け続けると、反撃する気力そのものが失われがちです。「自分が悪いからこんな目にあうんだ」と自己責任と受け止めてしまうようになると、悪循環がとまりません。

誰かに相談することは、その人との関係を閉じた状態から風通しのいい開かれた状態にすることです。人に知られてはまずいことをしている自覚があればそれだけでもやめてくれるかもしれません。自覚がないなら自覚してもらえれば変わるかもしれません。

自分は傷ついて当然ではない、つらい時はSOSをだせば助けてくれる人がいる、そういう経験自体が自己肯定感の回復につながるはずです。

【参考文献】

井上智介著、1万人超を救ったメンタル産業医の職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全