「自分が嫌い」「自信がもてない」のは、あなたのせいではない

「自信がもてない」「自分のことが嫌い」
「自分で決められない」「こんなネガティブな自分が恥ずかしい」などの悩みを持つ人は、少なくありません。

「こんなに自信がない自分は、なんてダメなんだ」 と自分を責めてしまって、さらに自信がなくなる。そんな悪循環は、どう止めればいいのでしょうか。

今回はそんなお悩みにお答えします。

1.自信がもてないのは、あなたのせいではない

 

高木英昌
児童精神科医です。自分を知ることで楽に生きられる人が増えることを願っています。

そもそも、自分で自分のことが信じられなくなるのは、なぜなのでしょうか。

これは、自分の考えや感じていることを、誰かに分かってもらいたかったけれども分かってもらなかった、信じてくれなかった、という経験が多かったのではないでしょうか。

例えば、子供の頃にお腹が痛い、頭が痛いと訴えた時に「なまけたいだけでしょ」「仮病でしょ」と信じてもらえなかった。

ちょっとした音がすごく気になって、落ち着かない時に「気にしすぎだよ」「弱虫だなあ」と、理解してもらえなかった。

一つ一つの出来事は、大きなことではないかもしれませんが、「チリも積もると山となる」で、そういう経験が積み重なると、けっこう根っこが深くなりやすいのです。

そして、一つ一つが小さいがゆえに、自分も周りも「大した事ではない」と見過ごしがちです。しかし、それが後々まで影響してくることは十分ありえることです。

時として、恥を感じて強い自己批判を持つクライアントが次のように主張することがある。
「良い子ども時代をすごして、悪いことは一つも起きていないのに、どうして恥と自己嫌悪を感じるのか理解できない」。
しばしば、虐待を経験したことがない一方で、彼らは感情を無視されたり拒絶された経験を持っている。無視されることは、自らの感情に対処したり苦しんでいる際の深刻な感情を落ち着かせることの学習に有害な影響を与える。
(デボラ・リーら、『トラウマへのセルフ・コンパッション』より引用)

2.安心感は、理解ある人と一緒に生み出していく

私達は、自分の身に起きていることも他者と共有して、「それは嬉しいね」「そんなことがあったら悲しいね」と合意してもらえて始めて、「これは嬉しいと思っていんだ」「悲しんでいいんだ」と腑に落ちます。自分の感覚や感情、考えを、信じられるようになります。

安心感や安全感は、自分ひとりで生み出すものではなく、理解ある他者との間に生まれてくるものです。

落ち着かない気持ちは、落ち着きのある誰かによってなだめてもらいながら、落ち着け方を学んでいくのです。これを協働調整といいます。

神経系を落ち着かせ「安全である」と感じるためには、他者との交流を通して、生理学的状態を協働調整することが必須であると、ポリヴェーガル理論の提唱者である、ポージェス博士も言われています。

反対に、自分はツライと感じていても「そんなことで弱音を吐くんじゃない」と叱られたり、訴えを聞いてもらえないと、「ツライと感じる自分がおかしいんだ、そう感じちゃいけないんだ」と自分の感情や感覚を、自分で否定することで、納得しようとします。判断の基準が自分の中に作られず、外にある状態です。

そして、常に外にあるモノサシに自分を無理矢理にでも合わせなければならない、と考えてしまうようになります。これは、とても不安でしんどい生き方です。

そうなると、常に周囲を気にして緊張するように神経が反応してしまいます。ポリヴェーガル理論でいうところの、サバイバルモードの神経系が働いている状態です。

頭よりも身体のほうが賢い?ポリヴェーガル理論とは?

3.自分のつらさを理解できれば、自分を責める気持ちが治まってくる

このしんどい生き方から抜け出すためには、どうしたらいいのでしょうか。

自分で自分を信じられない生きづらさがどこから来ているのかを振り返ることは、やはり大切だと思います。

幼い頃を振り返って、

  • 「あの時、本当は自分の言うことをもっと聞いてほしかった」
  • 「つらいんだね、とわかってほしかった」

そういう過去があった事実を振り返るのです。

振り返ることでつらくなってしまうにもかかわらず、そうやって振り返ることの意義はなんでしょう。

それは、自分で自分を信じられないのは、残念ながら過去に共感してもらえる経験が少なかったからであって、自分がおかしいのではなく、自分を責める必要もないということを知るためです。

自分を否定しない、自分を責めることをやめるためには、ただ「否定しないようにしよう」と決意するだけでは難しいのです。

過去に、

  • 分かってほしかったけど分かってもらえなかった。
  • その時にとても悲しかった。
  • 本当は分かってほしかった。

という当時の自分の気持を、今の自分が認めること。今の自分には伝わったよと当時の自分に伝える。そうやって、自己否定する自分を責めないようになるといいですね。

4.まとめ

そして今からできることとして、自分の感じていることや考えを、誰かに聞いてもらって、

  • 「それは苦しいよね」
  • 「そう思うよね」
  • 「そんなことがあったから、誰かに相談するのも難しかったんだね」

と自分の感じ方や考えは別に間違っていない、自分は自分でいいんだと確認するような経験を積み重ねていくことです。

それは身近な小さなことでいいし、むしろ日々の何気ない感覚や気持ちを共有することが大事です。

自分を大切にするとは、自分の感覚や感情を否定しない、しっかり感じることです。無理はせず、少しずつ自分らしさを取り戻していけるといいですね。

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