不登校の誤解③そんなことで休むの…と感じていませんか?

学校を休みたいと言えなくても、子どもは色々な思いを抱えていることを前回の記事でまとめました。

不登校の誤解② 学校に行けない理由を言えない=理由はないの?

今回はその続きです。

子どもが理由を述べるけれど、思わず「そんなことで休むの?」と言ってしまいそうな理由のこともあるかもしれませんね。

「子どもが嫌だと言っているけど、学校に確認したら、そんな嫌がるようなことは起きていない」

本人の言い分と、大人目線からの意見が食い違うこともあるでしょう。特に、敏感で繊細なHSCは、周囲からそういう反応をされることが少なくないと思います。

そんなときに、「それくらいで休んでいたら、社会でやっていけない」「忍耐力を付けるためには、つらくても頑張らせないと」とあえて厳しくして、学校に通わせた方がいいのではないか、という意見もあります。

今回は、この意見について考えてみたいと思います。

1.不登校の誤解③そんなことで休むの…と感じていませんか?

1-1.事実よりも「どう感じたか」

高木英昌
児童精神科医です。自分を知ることで楽に生きられる人が増えることを願っています。

子どもが学校に行きたくないと言う時、「何があったのか」という事実確認も大事ですが、同じくらい「どう感じたのか」も大切です。

「学校を休みたい」気持ちの背景に何があるのか、どんなことがあったのかを尋ねてみたら、その理由を言えることもあれば言えないこともあると思います。

理由を言えたときはそのあとに、「どんな風に怖かったの?」という本人の感じ方、気持ちも聞いてあげてください。

そして、理由をいえないときも、「何が嫌なのかは言わなくてもいいけど、どんな感じがするの?」と本人の気持ちの面だけなら言えることもあります。それをきっかけに色々と話し始めるかもしれません。

1-2.本人の感じ方を尊重する

同じ状況であっても、子どもによって感じ方はそれぞれであり、事実よりも「子どもがどう感じたのか」の方が、子どもの気持ちに寄り添う上では大切です。

  • びくっとする
  • 頭が真っ白になって何も考えられなくなる
  • 体が固まる
  • 体に電気が走る
  • 「●●ちゃんがいつも怒られていて(いじめられていて)かわいそう」

などの言葉がでてきたりします。

事実の確認も大切ですが、まずは本人が感じていたことを受け止めて「そんなに怖かったんだね、我慢していたんだね、話してくれてありがとね」と言うような言葉を伝えます。

【つらかったことを誰かが分かってくれた】ということが心の支えとなり、思いがさらにあふれてくるかもしれません。

あふれてきたとしたら、「その溢れんばかりの苦しさを、ずっと押し殺して我慢してきた苦労」をねぎらい、「それを今後も一人で抱えることにならなくてよかった」と伝えてあげてほしいと思います。

自分の感じ方を尊重してもらえると、自分の感じ方に自信を持てるようになります。

そして、聴いてもらえたということが、他人への信頼にもなります。

「つらいときは、つらいといっていいんだ」という安心感が、回復の土台になるはずです。

2.まずは気持ち、次に説明

子どもは、人生経験が少ないために、今起きていることが全てだと感じたり、今の苦しみがこれからもずっと続くのでは?と不安にもなりやすいのです。

自分が嫌だと感じたことが、本当に相手に悪意があったのかどうか、判断できないことも多いでしょう。だからこそ、まずは一旦本人の気持ちや感じ方を「それはつらかったね」と受け止めて、安心させてあげてほしいと思います。

安心して落ち着けば、「先生は怒ってたわけじゃないんだよ」とか「あなたが嫌いだからそうした、ということじゃないんだよ」と説明したときに、客観的な事情も受け容れやすくなると思います。

これは、「順番」が大切です。まずは気持ちを受け容れてもらって落ち着き、その次に事実確認です。

これが気持ちを受け入れてもらえないまま、「事実はこうだよ」と伝えても、気持ちに余裕がないと「自分の気持ちを分かってくれない」と感じて、よけいにツラくなってしまうかもしれません。

3.まとめ

人間、余裕を持つことは誰にとっても大切ですが、特にHSCはそうなのだと思います。

それでも学校にはいけないこともあるかもしれませんが、そういうときは「それだけ嫌なんだなと」と受け止めて休ませるのはアリだと思います。

「怖い」と感じやすいときにそこに飛び込むのは、「世界は怖いところなんだ」という拡大解釈にもつながりかねません。

まずは「この世界には、安心して過ごせる場所がちゃんとあるんだよ」という基本的な安心感を整えることが優先なのだと思います。

参考文献:
【1】石井志昂著「『学校に行きたくない』と子どもが言ったとき親ができること」、2021年、ポプラ新書

【2】明橋大二著「教えて明橋先生!何かほかの子と違う?HSCの育て方Q&A」、2019年、一万年堂出版