【HSP】人に頼るのが苦手で甘えられないのはなぜ?

今回はHSPの女性からの質問にお答えしてみたいと思います。

Q.人に甘えるのが苦手です。もっと甘えていいよ、頼ってねと言われても、申し訳ないし、迷惑じゃないかなと色々考えてしまい、とても甘えるなんてできずに1人で溜め込んで頑張りすぎてしまいます。甘えたり頼ったりできた方が人間関係は上手くいく気もするのですが・・・。

1.【HSP】人に頼るのが苦手で甘えられないのはなぜ?

高木英昌
児童精神科医です。自分を知ることで楽に生きられる人が増えることを願っています。

今回の質問は、同じように思っている人が多いのではないでしょうか。他人には「遠慮なく甘えてね」と言えても、いざ自分がとなると、なかなか難しいですよね。

掘り下げて考えてみたいと思います。

1-1.そもそも甘えるってどういうこと?

そもそも「甘える」とはどういうことなのでしょうか。これは意外と難しい問いです。

辞書では、

  • かわいがってもらおうとして、まとわりついたり物をねだったりする。
  • 相手の好意に遠慮なくよりかかる。
    などとありました。

他にはこうも言い換えられると思います。

  • 頼ること
  • 相談すること
  • 休むこと
  • 他者に親切にしてもらうこと

もう少し中立的な表現にすると、「誰かとつながること」ともいえます。

「甘えない」のが「自分一人で何とかする」ことなら、「甘える」は「誰かと一緒に何とかする」こととも言えますね。

1-2. 甘えるのが苦手な理由

甘えるのが苦手なのにも理由があります。その理由とは、自己肯定感が低いことがほとんどです。

自己肯定感は、誰かに「あなたは大切な存在だよ」と存在そのものを肯定してもらう経験が不可欠です。「自分は、甘えさせてもらえる価値があるんだ」と思えることが、自己肯定感とも言えます。

甘えることは、自己肯定感を育むため必要不可欠なのです。

今、自己肯定感が低いということは、子どもの頃から今までに甘えられる経験が少なかったのではないでしょうか。

  • 相談にいったら「甘えてないで自分でやりなさい」って言われて傷ついた。
  • 「つらい、悲しい」など自分の気持ちを吐き出していたら「泣くんじゃない、おとなしくしなさい」と、共感してもらえずに怒られることが多かった。

そんな「わかってもらえない」孤独感を抱えながら、必死に生きてきたのかもしれません。

だから、甘えるのが苦手なのも、自己肯定感が低いのも、あなたが天邪鬼なのでも、可愛げがないのでもないし、それだけしんどい思いをしながら、生きてきたんだと思います。

自己肯定感を育て直すのに遅すぎるということはありません。今から育てて言ったらいいと思います。

「甘えるのが苦手」なのも、少しずつ「甘える」練習をしていけばいいのです。苦手意識があると、練習すること自体に抵抗を感じるかもしれませんが、それは慣れていないからです。ちょっとずつ練習を重ね、慣れていけばいいのです。

決して「甘え上手」を目指す必要はありません。甘えたいときに、甘えたい人に、甘えられれば十分です。

2.HSPに甘え下手が多いのはなぜ?

「HSP=甘えるのが苦手」では決してありませんが、苦手な人は多いようです。

HSCは、nonHSCに比べて、親や大人の気持ちを敏感に察知するので、大人が自分に何を求めているのか、何を期待されているのかを鋭くキャッチする傾向にあります。そして大人が望む行動をとれてしまう。

そうすると、大人からは「この子は手がかからなくて、いい子だ」と見えます。そうなると、大人も楽なので、次第に手をかけなくなる。そして、子どもは自分で何とかやろうとして深く考え、あまり人に助けてもらわなくても自分でできるようになってしまいます。

また「いい子」であることをほめられ続けると、自分がいい子でいる間は受け入れてもらえるけれど、自分の悪いところを出したら、そのとたんに嫌われるんじゃないか、見捨てられるんじゃないかと怖くなることもあります。

私たち大人は「自分のことは自分でできることがいいこと」「子どもが早く一人でできるようになるのは、賢い子だから」と手放しで安心しがちです。

もちろん、できることが多いのはよいことですが、まだまだ子どもです。それなのに、手のかからない「いい子」になり、それが当たり前のように評価されてしまうと、十分甘えられないまま、大人になってしまうことがあります。

そして「甘えない子=いい子」だけならまだしも、「甘えるのは、悪い子」という悲しい誤解をうみ、誤学習されてしまうのです。

本来HSCは、不安も感じやすいため、本来ひといちばい甘えたい気持ちも強いはずです。

HSPを提唱されたアーロン先生はこう言われています。

大切なのは、「必要な時は、助けてくれる人がいる」という安心感です。HSCの場合は危険をより鋭く察知するので、周りに支えてもらうことが必要です。しかも、母親や周りの大人が自分をどれほど理解し、助けてくれるのかを、よく感じ取っています。

(エレイン・N・アーロン著、「ひといちばい敏感な子」)

この「必要な時は、助けてくれる人がいる」という安心感こそ、自己肯定感そのものであり、甘えが必要不可欠な理由です。

そのため、HSCでそのような環境になかった人は、自己肯定感が十分に育たないこともあるんです。

3.甘えることの苦手意識を変えるには?

HSC、HSPで自己肯定感が育みにくくて甘えるのが苦手なのはわかったけど、自己肯定感を育て直すのは時間もかかるし、どうしたらいいの?と思いますよね。

自己肯定感を育て直すことの他に、オススメしたいことがあります。

それは、HSPの敏感さの観点で過去を振り返ることです。

  • どんな言葉をかけられて育ってきたのか
  • 大人に言われて悲しかった言葉は何か

など、結構しんどい環境で生きてきたんだなと気づくと、甘えることの苦手意識や罪悪感を和らげることが出来ると思います。

特に自信を失った出来事をもう1度捉え直す必要があります。記憶を呼び起こし、それがあなたの敏感さが原因で起きたものでなかったか、積極的に検証するのです。たとえば、その時、刺激がオーバーしていたとか、あるいはオーバーすることを避けようとしていたとかです。もしそうなら、あなたが悪いのではなく、それは「パッケージ・ディール(いいところも、悪いところも一つ)」です。あなたは失敗したと思っているかもしれませんが、それは敏感なあなたが自分を守るために、必要な行動だったのです」

(エレイン・N・アーロン著、「ひといちばい敏感なあなたが人を愛するとき)

これは、甘えることの苦手意識を和らげるために必要なインナーワークです。

「HSPだから、甘えるのが苦手でも仕方ない」と諦めなくてもいいのです。

自己肯定感が低いと感じているときに、育て直すための第一歩は、自己否定していることに気づき、自己否定を一旦とめることです。

甘えるのが苦手なのは、あなたに甘える価値がないのではなく、上手に甘えを受け止めてもらった経験が少なかったからです。

これから少しづつ楽になっていって欲しいなと思います。

4.まとめ

 

甘えへの苦手意識をやわらげるためには、以下がポイントです。

  • 甘えることは、自己肯定感を育むためにだれでも必要なものだと意識する
  • 甘えるのが苦手なのは、甘えさせてもらう価値がないからでも、生来甘え下手なのでもなく、甘えられる経験が少なかったから。
  • そういう振り返りを通して、自己否定を減らす。
  • まずは、誰かに話を聴いてもらうところから。
  • 弱音やつらい気持ちを聴いてもらうことは、気持ちを押し殺すクセがつかないようにするためにもとても大切なこと。

少しずつ少しずつ、いい経験を積み重ねていけるといいですね。