赤ちゃんの夜泣きを何とかしようと調べていると、結構見かけるのが、「ママが不安になっているから泣くんだ」というもの。
私が初めてその言葉を見た時は、「え、私が悪いの?」ととても落ち込みました。
確かに赤ちゃんはママの気持ちが伝わるとは言われますが、実際はどうなのか調べてみました。
この記事の内容
1.「ママが不安になっているから夜泣きする」ってほんと?夜泣きと母親の性格の関係とは。
夜泣きで心身ともにしんどくて悩んでいるときに、「ママが不安になっているからだ」なんて言われたら、もっとしんどくなりますよね…。長男は3歳半まで夜泣きをしていたので、当時はそれはもう調べまわりました。子育て相談と名の付くものは、行政のものも民間のものも何度も行きました。しかしその度に、アドバイスされることはほぼ一緒で、すでに試したものばかり…。
がっかりしている私に追い打ちをかけるように、「ママが不安になってるからだよ」「今が一番かわいいときなんだから」と何度言われたかわかりません。相談に行くたびに、楽になるどころか、私自身を否定されているようで、なおのこと精神状態は悪化していきました。
そこで、実際ママの不安が赤ちゃんに与える影響について調べてみました。するとこんな研究結果を見つけました。
乳幼児の夜泣きと母親の性格特性において、勤勉性、 知性が高い傾向にある母親に夜泣きが 「有る」と回答した人が多く、「無い」と回答した母親では情緒安定性が目立つ
傾向にあることが示された。 夜泣きの有無については半構造化面接で被調査者に 「あれは夜泣きである」 と感じたことがある場合に 「有る」 そうでない場合は 「無い」と回答する様に教示した上での調査であり、 夜泣きを感じ取りやすい性格傾向か否かという側面も含まれることも考えられるが、いずれにせよ乳幼児の夜泣きには母親の特性が関与していることが示され今後さらに詳しい調査研究が必要と思われる。(中田孝子,乳幼児の夜泣きと母親の性格特性の関連における考察-主要5因子性格検査を用いて-より)
この研究結果から、やはり母親の性格と夜泣きは直接的ではなくても関係はありそうですよね。
また、このような研究もありました。
ママのストレスが赤ちゃんに与える影響を調べる実験がアメリカの研究者たちによって行われたことがあります。実験の流れはこうです。
対象となった70人ほどのママたちには全員1歳の赤ちゃんがいます。ママは赤ちゃんと別れて3つのグループに分けられ、2人の面接官の前でスピーチをして、その後質疑応答を行います。
1つ目のグループでは、面接官は笑顔で絶えずうなずきながら、好意的な質問を行います。2つ目のグループでは、面接官は首を横に振ったり腕組みしたり、否定的な発言ばかりを行います。3つ目のグループは面接官から何も言われることなく面接を終わります。
この面接後、ママと赤ちゃんが再会した時どのような変化が起きるか観察されました。
否定的な発言をされたグループのママは、一番ストレスを感じている状態で赤ちゃんを抱っこすることとなります。するとこのグループの赤ちゃんたちは、ママに抱かれた瞬間から心拍数が上がり、ママよりも強くストレスを受けているサインが出てきたそうです。しかも赤ちゃんのストレスのサインは長い時間続きました。
この実験の結果から、ママのストレスは赤ちゃんのストレスとなること、そして長時間ストレスホルモンにさらされることで、赤ちゃんの脳の発達に悪影響を与える可能性があることがわかったそうです。
この研究は夜泣きに特化したものではありませんが、ママのストレスは赤ちゃんに伝わり、かつ赤ちゃんのストレスは長く続く、ということはそれが夜泣きにも繋がることは十分考えられるんだろうなと思います。
2.「夜泣きの原因はママが不安だからと」と言われて不安にならない人はいない
こう聞くと、「じゃあやっぱり私が悪いのか…」と思いますよね。現に当時の私はそれはもう凹みました…。そこで、ある種の開き直りですが、そもそも夜泣きをすることで赤ちゃんのその後の成長に何か問題があるのかを調べてみました。
2-1.夜泣きはその後の発育に影響を及ぼすのか?
調べてみた結果、このような記事を見つけました。
さて、夜泣きそのものは、赤ちゃんには無害です。
しかし、夜泣きがもたらす影響として、「泣き止ませようと子どもを傷つけてしまうリスクが増える」ことが報告されています。
このオランダの研究では、6カ月までの赤ちゃん3259人を評価したところ、保護者の5.6%が、赤ちゃんを泣き止ませるためにたたいたり揺さぶってしまった経験があると答え、また泣き声が過剰だと感じる保護者ほどそうした行動を取りやすいことが分かりました。
また、産後うつは出産した母親の10-15%に起こるとされていますが、夜泣きのあるお子さんでは母親が産後うつになるリスクが上がることも複数の研究で報告されています。
夜泣きのほとんどは病気ではなく治療の必要もありません。
小児科医として相談を受けた場合に「病気ではないので大丈夫ですよ」と伝えることはもっとも大切な役割のひとつです。
ただ、上記のように夜泣きには家族にも影響を与える側面があります。夜泣きの家族への影響を知り、対策を一緒に考えることも小児科医にとって大切だと考えています。
「夜泣きは無害であり、ほとんどは病気ではなく治療の必要もない」これが分かってすごくほっとしました。
なぜなら、何を試しても夜泣きがおさまらなくて、もちろん寝不足はしんどかったのですが、それ以上に「私の関わり方が悪くてこうなっているのだとしたら、これからのこの子の成長に悪影響だったらどうしよう…」という不安が大きかったからです。
不安になっている時に、不安になるからダメなんだよという言葉は、慰めやアドバイスではなく、とどめの一言ですよね。
もし今周りにそういう人がいるなら、しばらくは距離を置いた方がいいと思います。上の研究にもあるように、母親のストレスは赤ちゃんに影響を与えるからこそ、母親にストレスを与える人とは距離を置くのが最善ですよね。
「夜泣きの原因はママが不安だからと」と言われて不安にならない人はいません。現代は核家族社会で、アパートの一室で赤ちゃんと2人っきりで孤立している親子がたくさんいると思います。
周りは心ないことを言ってくる人もあると思いますが、寝不足でしんどい中、子育てを頑張っているのは本当にすごいことですよね。
いつおさまるかわからない夜泣きだからかそ、旦那さんやご両親、一次保育、託児所、とにかくひとつでも多くの頼り先を確保して、少しでも体を休める時間を持って欲しいなと思います。
3.まとめ
夜泣きをすることと、ママの性格は関係はありそうでしたね。また、ママが強いストレスを感じていると赤ちゃんにも伝わるようです。
でも、それが分かったからと言って、「じゃあ不安になるのやめよう!」なんて簡単な事じゃないですよね。不安になりやすい性格というのもありますが、そういう環境だからというのも大きいです。
原因はどうあれ、夜泣きが赤ちゃんの成長に悪影響を与えることはないので、いろんな人や機関に助けてもらいながら、少しでも楽に子育てができる人が増えるといいなと思います。
【参考サイト】
【1】ママの「ストレス」は赤ちゃんにも伝わる?実験の結果が明らかに
【2】「赤ちゃんが泣き止まない…」追い詰められる前に 小児科医が答える夜泣き対策
【参考文献】
中田孝子,乳幼児の夜泣きと母親の性格特性の関連における考察-主要5因子性格検査を用いて-