不登校の誤解について、色々述べてきましたが、ではどうすれば乗り越えることができるのでしょうか。本人にとっても親御さんにとっても、回復の見通しを持つことは大切です。
先が見えないと「このままだと、ひきこもりになってしまうのでは・・・」と不安になることもあるかもしれません。
不登校となった子が、また元気になっていくまで、どのような回復過程を辿るのでしょうか。
今回は第1弾です。
1.不登校を乗り越えるために~回復のプロセス~
回復のプロセスは、大きく3段階に分けて考えるとわかりやすいです。
- 休養期
- 充電期
- 援助期
これらを、骨折した時に例えてみましょう。
- 骨が折れたら、まずは骨がくっつくまで安静が必要です。この時期に無理をすると骨折が複雑化・難治化してしまいます。
- 骨がくっついたら、少しずつリハビリをしていきます。ここで過度な負荷をかけると悪化しかねないので、無茶は禁物です。
- 動けるようになったら、日常生活に戻る準備をしていきます。完全復帰ではないので周りの人の援助を受けながら。
詳しく説明したいと思います。
1-1.回復のプロセス①休養期
骨折時と同じように、まずは休養です。
学校を休むことになるまで、すでにかなり無理を重ねてきているはずですし、我慢に我慢を重ねて、いよいよ限界を迎えて、勇気を振り絞っての「学校を休む」という決断にいたっていることがほとんどです。
相当疲れているわけですから、まずは休養です。休養とは、「何をして過ごしてもいい」ということです。寝たいならば寝たいだけ寝る。遊びたいときは遊ぶ。
この時期は、生活リズムを整えるのも後回しです。「学校行かなくても、せめて朝は起きなさい」と言いがちですが、それだと学校は休んでいても、心身が休まらないのです。いわば「ダラダラ過ごす」時期です。それが「ゆっくり休めている」ということです。
疲れていると、何もせずにボーっと過ごすしかなく、何かをしていても楽しいと感じないことが多いです。動画を見ていたり、ゲームばかりやって過ごす子も少なくありませんが、「楽しいからやっている」というケースはあまりなく、退屈しのぎに見ていることがほとんどです。
全く何もせずボーっとしていると、考えたくないこと、不安なことばかりが頭に浮かんで、かえって調子が悪くなることもあります。そのため、まずはボーっとして過ごすために、動画やゲームはある程度許容してもよいと思います。
爆発期
学校を休み始めた後、家で暴れるようになるケースもあります。それまで我慢して、抑圧してきた気持ちが爆発・発散されるためです。学校を休んだために状態が悪くなったように感じられるかもしれませんが、そうではなく、それだけ我慢に我慢を重ね、ドロドロした気持ちがたまっていたということです。
やっと、苦しみを吐き出せるようになったという意味で、回復の大いなる一歩です。デトックスの時期とも言えます。これは吐き出しきることが大切ですので、「吐き出せることがいいこと」と思って、ケガなどの危険がない限りは、付き合ってあげることが大切です。心をマヒさせてやり過ごしてきたのが、少し休めたことで心が動き出すのです。
1-2.回復のプロセス②充電期
骨折に例えると、骨がくっついたら次はリハビリです。リハビリは、少しずつ負荷をかけて慣らしていく時期です。本人のペースに合わせて、ゆっくりと。
不登校においても、十分休めると、だんだんと何かをやりたいという意欲が出てきます。多くの場合は「あそび」です。
この時期は、楽しいと思えることをしっかり楽しむことが大切です。「学校を休んで遊んでばかりいて・・・」と思われがちですが、ずる休みして遊んでいるわけではなく、心の回復のために必要な充電期間です。楽しいことをしないと、心は元気になりません。
そして、傍からは「そんなに元気に遊べるなら、そろそろ学校に行ったら?」とも思えてくる時期ですが、楽しいことをやるためのエネルギーと、嫌なこと・ハードルが高いことにチャレンジするために必要なエネルギーは同じではありません。
風邪をひいたときに、好きなモノなら食べられるけど、ちゃんとした食事はとれないことがあるのと同じです。弱っているときは、好きなこと、楽しいことをまずはしっかり味わうことが大切なのです。
1-3.回復のプロセス③援助期
ある程度、充電できてくると、家で遊ぶだけではつまらなくなってきます。貯まってきたエネルギーを使いたくなってくるのです。
その時に大人の「援助」の出番です。「それなら早く学校に行こう」と勧めたくなりますが、「何をするか」は本人が選ぶべきです。もちろん「学校に行きたい」と本人が思うならば、それに越したことはありません。
ただ、いきなり学校に行くのはハードルが高いという子もいます。その時こそ親御さんや学校の先生たちの力を借りるときです。
子どもが何をするか選べるように必要なのは、情報です。
どんな居場所があるのか、フリースクールや適応指導教室、教室以外の学校の一室で過ごせるのかなど地域や学校によって様々です。
子どもがどうしたいのか、子どもが自分で主体性をもって選ぶための「援助」が必要になる時期です。大人はあくまで援助役であり、結論ありきの説得やアドバイスはするべきではありません。
大切なのは、子供の意見をよく聞き、時には親としての意見も伝え、話し合うのです。結論は急がず、ですね。
2.まとめ
回復のプロセスを一言でいうと、「本人のペースを尊重する」ということです。そして、尊重して見守るときの家族の心がけとしては「元気であることが一番。学校は二番。」です。
元気にさえなれば、そして本人がやる気にさえなれば、取り返しはつきます。しかし、元気がでなくてやるきにならなければ、どれだけ周りが一生懸命に何かを勧めても、それがかえってプレッシャーになってしまい、温度差が大きくなるほど、心の距離も広がり、子どもの心は閉じてしまいます。
いわば「北風よりも、太陽」作戦です。周りが一生懸命、本人を動かそうとすればするほど、逆効果になりかねません。そうではなく、本人が自ら動き出したいと思うまで温かく見守る。
それは、子どもを信じるということであり、学校に行けてもいけなくても、大切な存在であることには変わりないという一番大切なことを、ちゃんと大切にするということでもあります。
不登校は、ある意味で、そんな「一番大切なこと」を思い出させてくれる機会にもなります。それはきっと、これからの人生にとって、かけがえのない心の支えとなってくれると思います。
不登校になっても、そこで人生が終わってしまうということはありません。家族で一緒に乗り越えていけることを願っています。