よく聞かれるようになった自己肯定感という言葉ですが、わかっているようでよく分からない言葉でもあると思います。簡単にいうと自己肯定感とは、「自分は自分でいいんだ」「自分にも生きる意味はあるんだ」と思える気持ちを言います。
これは、
- ○○ができるから
- あの人よりマシだから
- いい子だから
「だから自分は生きていてもいいんだよね」という条件付きの自己肯定ではありません。「できることもあるし、できないこともあるけど、誰もがそうだし、自分は自分なりに生きている」という無条件の自己肯定です。
できない自分を認めるということでもありますね。「そんなこと言われても、それができないから困っている」という方や、「調子がいいときはそう思えても、ツラいときは無理」という方もいますよね。そんな時に読みたい国内外の心理学者や精神科医の名言を集めてみました。
この記事の内容
1.自己肯定感の提唱者の言葉~キーワードは「解放」と「安心」~
まずは、「自己肯定感」という言葉を提唱された、臨床心理士の高垣忠一郎先生の「生きづらい時代と自己肯定感」【1】から、自己肯定感とは何かを考えてみたいと思います。
その人らしく生きるには、「自分が自分であって大丈夫」という解放と安心をもたらす自己肯定感が必要なのだと私は考えます。
「自分とたたかわない」心が、「自分が自分であって大丈夫」という自己肯定感のもたらすものである。
キーワードは「解放と安心」です。「解放」が大切ということは、何かに囚われて、縛られていないか、という自問自答してみることが大事ということ。「安心」感は、自己肯定感を育てる上でとても大切な感覚です。安心できない何か、不安に感じる何かがあれば、まずはそれに気づくことから始められます。
自己肯定感とは、「自分は自分でいいんだ」という安心感です。それが心の土台となり、安全基地となります。
2.アメリカの心理学者の名言~視点を変えたい時に~
自分を肯定するとは、自分にやさしくなる、自分に慈悲の心を向ける、ということでもあります。欧米では「セルフ・コンパッション(自分への慈悲)」【2】という、マインドフルネスの応用版として、普及したセルフケアがあるので、それを参考にご紹介します。
まずは、ずっと自己肯定感が低くて「自分のいいところ、肯定できるところなんて見つからない」と悩んでいるときに、少し視点を変えてみるための名言です。
自分自身に慈悲の心を向けるためには、まず自分が苦しんでいることに気づかなければならない。
By クリスティーン・ネフ
自分への優しさは、多くの人が習慣としている継続的な自己評価や軽蔑的な内なる批評を止めることを意味している。
By クリスティーン・ネフ
自己肯定するための第一歩は「自己否定をやめる」ということです。
自己肯定感が高まらない、どうすればいいかわからない、ということは「自己否定がとまらない」「自分なんてダメだとしか思えない」ということではないでしょうか。まずは、自己肯定感を育てたいという気持ちの裏には、自己否定をやめたい、という気持ちも隠れていることに気づくことが大切です。
それがまた難しい…そんな時は「友人や知人に対してなら、どう接するか」と視点を変えてみるといいかもしれません。
「親友、さらには見知らぬ他者に対して接する際と同じ優しさや思いやり、慈悲を自分自身に向けることである。しかし、悲しいことに人は自分自身を最も悪く扱う。」
By クリスティーン・ネフ
他人になら優しくできるけど、自分にはできない。まずは、自分に厳しくしていることに気づくことから始めましょう、ということですね。この「気づき」が大切です。
3.精神科医の名言~頑張ってきた自分を認める~
このことは、精神科医の水島広子先生も仰っています。
水島先生は、認知行動療法と双璧をなす2大精神療法の一つ「対人関係療法」の日本における第一人者です。その水島先生の「自己肯定感、持ってますか?」【3】からの名言です。
「自分は恵まれていない」と思ってきた人ほど、そんな中で頑張ってきた自分を認めてあげてください。涙が出るほどに、自分が愛おしくなると思います。「誰だって、恵まれていないところはあるのだ」と叱咤激励してくる人もいるかもしれません。でも「誰だって」のレベルは人によってずいぶん違いますし、頑張って生きてきた人をおとしてめても、プラスの効果は何もありません。大切なのは、そんな中でも一生懸命生き延びてきた自分や他人をリスペクトすることなのです。
By 水島広子
「自分のいいところが見つからない」のは、いいところをほめてもらえなかったり、頑張りを認めてもらえなかったのかもしれません。人は周りの支えや見守りの中で育ち、成長していくものです。それなのに、思うように支えてもらえない、自分なりの頑張りを認めてもらない中で生きていくというのは、相当しんどいことです。
そんなしんどい中を「生き延びてきた」から今があるはずです。まずはそうやって「一生懸命生き延びてきた」頑張りに焦点を当ててみてはどうでしょうか。自己肯定感を育てるということは、「ありのままの自分を受け入れる」ということですが、具体的にどうすればいいのでしょうか。水島先生の著書から引用します。
「今どれほど「自分はダメだ」と思っているとしても、それは、「自分はそれほどダメだ」ということを意味するのではなく、「そう思うに至った事情がある」という意味なのだということです。人から批判されることも、自信を失うような衝撃的な体験をすることも、人間にとっては傷つくことです。本来は「傷ついてかわいそうに」と言うべきところを、「自分はダメだ」と思いながら生きてきたというのは、本当に大変だったことでしょう。そんな自分を「よく頑張ってきた」と認めるのと同時に、今からでも「傷ついて大変だったね」といたわってあげてください。過去を変えることはできませんし、そこで傷ついたという事実を消すことはできません。だからこそ、それを否認して「自分はダメだ」と思うのではなく、「傷ついて大変だったね」と言ってあげるところからスタートするのです。それこそが「ありのまま」を受け入れる、ということになります。」
(精神科医 水島広子)
4.心理学者の名言~ありのままの自分を受け入れる~
最後に、自己肯定感を育てるということの本質を、短い言葉でズバリ言い著した、「来談者中心療法」で有名な心理学者、カール・ロジャースの名言です。
興味深い矛盾は、私たちがありのままの自分を受け入れることができると成長できるということである。
By カール・ロジャース
「変わりたいけど、変われない」「自己肯定感を高めようとするほど、自己否定しかできない」と感じるときは、まずは変わろうとするのではなく、今の自分の気持ちをありのままに感じてみる。「変われなくてもどかしいよね」「焦るよね」と確認してみる。肩に入った力が抜けたら、それはもう自然な一歩を踏み出しているのではないでしょうか。
5.まとめ
以上、自己肯定感に関する名言8選いかがでしたか?
自己肯定感は知れば知るほど心の深いところに関わっていると感じます。自分の心を見つめることは、時に恐ろしいこともありますが、誰の評価を気にするのではない、ありのままの私を受け入れられた時の安心感は、生きる力を与えてくれます。
そんな自己肯定感を持てる人が増える世界になることを願っています。
【参考文献】
どんなことを不安に感じていますか?