自己肯定感が大切とはよく聞くけど、わかるようでわからない。
自己肯定感という言葉にそんなイメージはないでしょうか?
自己肯定感を理解するために、重要なキーワードが2つあります。
それは「甘え(依存)」と「自立」です。
真逆じゃないかと思いますよね。
これらの大切さと、その関係がわかると、自己肯定感の本質がよくわかるようになります。
今回も、著名な精神科医や心理学者の名言から学びたいと思います!
この記事の内容
1.自己肯定感を深く知れる名言①~明橋大二先生
自己肯定感とは、簡単に言うと、
「私は私のままで大切な存在だ」と思える気持ちを言います。
これは、
- 自分は〇〇が得意だから
- こんなに頑張っているから
- 人の役にたっているから
だから『生きてていい存在だよね』というように、
生きていることに対して条件がいる気持ちではありません。
いい所も、ダメダメな所もひっくるめて、私は私でいいねと思える気持ちを言います。
↓詳しくはこちらの記事でも書いていますhttps://bit.ly/37hLxZL
自己肯定感を育むということは、心が健全に育っていくということです。
そのうえで、まず大切なのは「甘え」です。
精神科医の明橋大二先生は『 子育てハッピーアドバイス』シリーズでくり返し強調されています。
甘えない人が自立するのではなく、甘えていいときに、じゅうぶん甘えた人が自立するのです。
「甘え→自立」という順番が大切ということです。
なぜ甘えから始まるのでしょうか?
それは、しっかり甘えて、
「自分は自分でいいんだ、大切にされる価値があるんだ」という心の土台があって初めて、
自立したいという気持ちが起きてくるからだと言われています。
心の土台とは「存在の自信」とも「基本的信頼感」とも言われます。
自立を促す前に、いかにこの土台となる「存在の自信」を育めるかが、自立に大きな影響を与えます。
にも関わらず、甘えの大切さがそっちのけになっていて、
「自立することが素晴らしい」
「なんでも一人で出来るのがいい子」
と自立ばかりが強調されすぎていないか、心配になることがよくあります。
2.自己肯定感を深く知れる言葉②~小此木啓吾先生
精神科医の小此木啓吾先生も『 精神分析のおはなし』で語っています。
うちの娘が小学校に入ったとき、その学校の先生はいつもおっしゃいました。「親から自立させなければいけない、子どもたちは自立が足りない」と。
ところが、私たちのような精神保健を含め、社会福祉とかの立場から見ますと、今の世の中では「どうやって人にうまく、しかも心地よく頼ることができるか」ということの方が、基本的な課題だと思います。じょうずに依存する、甘え上手の人、人に頼ることがうまい人に、心の健康を保ち、社会的にもうまくいく人が多い。
小此木先生は、ウィニコットというアメリカの児童精神科医の言葉を引用され、
「依存(甘え)には2つある」と言われます。
「絶対的依存」と「相対的依存」の2つです。
前者は不健全な依存で、後者が健全な依存。それぞれを詳しく見ていきます。
2-1.よくない甘え(絶対的依存)は甘えではない
まずは、「絶対的依存」について見てみましょう。
客観的にみると人に依存していなければやっていけないにもかかわらず、自分は相手に依存しているという自覚がない状態を言います。(中略)依存している本人も、依存しているという自覚もない。だから見捨てられる不安もない。相手に気遣いもしないし、感謝もない。(中略)つまり、全部自分の力でやっていると思っていますから、逆に本当の意味で甘えるということがうまくできない。人に助けを求めるということができないわけです。
これは、よくない甘え、いわゆる「甘やかされすぎて自立できなくなる」パターンです。
2-2.いい甘え(相対的依存)が心の発達を促す
これに対して、相対的依存(いい甘え)とは、
本人も相手に頼っていることに気づいている関係です。誰かに頼らなくては一人ではやっていけない、そういうある種の無力さ、ヘルプレスな気持ちというものがどこかで気づいていて、そして誰かに頼ることで何とかやっていこうとする。
ウィニコットはこのような相対的な依存の意識をもつことができるようになることが、人間の心の発達ではとても重要なテーマであると言っています。この意識があって分離不安があるから、頼れることのありがたみもわかり、感謝の気持ちも抱けるようになるのです。
つまり、依存には、いい依存と、悪い依存があるということです。
適切に依存できることは、自立するためにも、必要不可欠なんですね。
自立と依存は、決して対立するものではない、というのがポイントです。
あるところで人を頼るからこそ自立ができる。
そうして自立しながらまた依存へと行く。
自立と依存のあいだを往ったり来たり、何度も繰り返しながら成長していきます。
自立している大人だって、甘えたいとき、依存したいときはありますよね。
3.自己肯定感を深く知れる言葉③~河合隼雄先生
同じことは、ユング心理学で有名な、河合隼雄先生も『 Q&A こころの子育て 誕生から思春期までの48章』で仰っています。
自立っていうのは、子どもが「自分で立っていく」ことだから、子どもがひっついてくるうちは、いくらでも甘えさせていたらいいんですよ。
「いくらでもよりかかってきていいし、いつ出ていってもいいよ」というのが、一番いいんです。「はい、よりかかっておいで。あ、出ていくの、どうぞ」ってなったらいい。まあなかなかそうはいきませんけど。
余裕を感じさせる河合先生の言葉は、暖かさに満ちています。
そして、いい甘えと、悪い甘え(「甘えさせる」と「甘やかす」)の違いについて、次のように説明されています。
親の葛藤も交えながら。
子どもが甘えてきたときに、甘えさせるのはいいんです。子どもが甘えたいという気持ちを、受け入れてやっているんだから。ところが甘やかすというのは、甘えさせるのと違って、「なんでもかんでも、親の私にベタベタしてたらよろしい」という姿勢なんです。いいも悪いもない。相手が何を考えているだろうかという判断が完全に抜けてしまってる。育てるということは、あたたかい目で見守ることが必要なんです。子どもは悪いこともしてるし、よいこともしてる、だけど、あたたかく見てる。となればそこに判断はあるわけです。
親になったら、どうしても直線的にまっすぐ、右上がりに子どもが成長していくことしか考えられない。次はこうなって、と考えるとき、前よりも上がることばかり思うでしょう。ところが実際に子どもが成長するということは、下がっては上がり、上がっては下がり、とジグザグで行くものなんですよ。ジグザグで下がったときに、親が悠々としてくれてたら、子どもも生きやすいですね。だからといって「ああ、下がってるか」と放っておくのはダメです。ちゃんと気にはかけてないといけない。だけど、さわぐことはないんですよ。
また、こんな風にもいえるかもしれません。
- いい自立とは、依存もできること
- よくない自立とは、依存できないこと(孤立)
- いい依存とは、自立もできること
- よくない依存とは、自立できないこと(絶対的依存)
当事者研究の第一人者である熊谷晋一郎さんは、
「自立とは、依存先を増やすこと」と表現されています。
4.まとめ
自分には、できることもあれば、できないこともある。
誰かに頼って助けてもらうこともあれば、
誰かの力になることもある。
「自分もやればできるんだ」
「困ったときは助けてもらえるんだ」
「自分も誰かの力になれるんだ」
そうやって、
「みんな幸せになるために生きているんだよね」と、変に力むことなく思える気持ち、
それが自己肯定感です。
真の自立とは、他人と自分を分けてしまうものではなく、
つながりを意識して、自分も相手も尊重できることではないでしょうか。
自己肯定感は、他者肯定感にもつながります。
自分も周りの人も、お互いに、
もっともっと大切にできるようになりたいなと思います。
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