うつ病だった10年ほど前、大学を休学したり、仕事を休職したりしていました。
周りからは、まずはゆっくり休んで戻ってきてねと声をかけられました。
「しっかり休んで早く良くならなきゃ」とものすごく焦っていました。
そしてその時、わからなかったことがありました。
それは、【休む】こと。
休むってよく使いますが、みなさんは休むって何をすること?と聞かれてはっきり答えられますか?
私はさっぱり分かりませんでした…
大学も仕事も行っておらず、確かに休んでいるのですが、休まらなかったのです。
案外、休むってどうしたらいいのかわからない、
上手く休めず疲れがたまるという人も多いのではないかと思います。
今回はそんな休むことについて、児童精神科医の先生にお聞きしました。
1.休み方がわからないのはなぜ
「頑張りましょう」「自立しましょう」「甘えてはいけません」などの言葉がいまだに飛び交っています。
診察にこられる親御さんには「今のうちからしっかりしつけないと、将来この子が苦労するから」と、真面目に語る方は少なくありません。
それも、小学生だけでなく、幼稚園のお子さんに対しても、です。
小学生や中学生になると、習い事や塾にも通い、家に帰ってからも、宿題をしなければならない。加えて、部活の朝練もある。
この子は、いつ休んでいるんだろうと心配になることが少なくありません。
唯一の息抜きは、寝る前の時間。スマホやゲームをやりたいけれど、朝起きられないからと注意されて、思う存分には楽しめない。
子ども時代からこんなふうに生活をし、いつも頑張っていることが素晴らしいのだという教育の中では、
休むことがわからない人が多いのも当然かもしれません。
2.休み方がわからない?
上記のような忙しい子どもたちに「そんなに忙しいと疲れると思うけど、疲れてない?」と聞いても、
「そんなことない」「大丈夫です」と答える子は多いです。
すでに疲れているとはどういう体の状態かもわからないという子も少なくない。
「もう少し休んだ方がいいと思うけど、休むってどういうことか分かる?」と尋ねると、
「休んでってどうすればいいかわからない」という答えが返ってくることも珍しくありません。
また、
- ほっとするってどういうことかわからない
- 学校を休んでても、休まらない
- 休んでると怠けてるみたいで、かえって落ち着かない
という声もよく聞きます。
2-1. 休むとはどういうこと?
ではそもそも、「休む」とはなんでしょうか?
広辞苑では、
- 心身の疲れを取るために、仕事や活動を中断する
- 休息する
- 眠るために床につく
- 仕事や勉強のためにいつも通っている場所に行かないですます
とあります。
私たちの思っている「休む」はこういうことですよね。
では、眠ったり、仕事や学校を休むことだけで、心身ともに楽になるでしょうか?
確かに、風邪をひいた時など、体に不調がある時は、
栄養のあるものを食べて、水分をしっかりとり、ゆっくり眠ることで元気になりますよね。
しかし、疲れている時は、必ずしも食べて寝ていればよくなることばかりでありませんよね。
休むとは【体の力が抜けて、リラックスできること】を指します。
そしてそれは、心と体それぞれの状態があります。
まずは休むと言っても、体を休ませることと、心を休ませることの2つがあることをぜひ知って頂きたいと思います。
3.体の力を抜く方法
ではまずは、体の力が抜けて、リラックスできる状態にするには、何をしたらいいのでしょうか。
結論から言ってしまえば、人それぞれです。
リラックス出来るのはどんな時ですかと聞くと、
- 好きな音楽を聴く
- 横になる
- 好きな飲み物や食べ物を食べる
- お喋りをする
- スポーツをする
- ぼーっとする
- ゲームをする
- 本を読む
など、人によって様々ですよね。
でもこれらでは力が抜けない、という人もあると思います。
そんな人にはいくつかお勧めたいことがあります。
3-1.呼吸法
体に力が入っている状態というのは、交感神経が優位になっているということです。
この自律神経(交感神経、副交感神経)のバランスを整えることができるのが呼吸法です。
呼吸法と言ってもたくさんありますが、リラックス状態にするには、腹式呼吸がおすすめです。
無理のない程度に、気がついた時に気軽に取り入れてみてください。
3-2.筋弛緩法
寝る前や、眠れない時におすすめなのが筋弛緩法です。
名前を見ると難しそうですが、やることは簡単です。
- 横になる
- 足先を起こして力を入れた状態を10秒キープし、ふっと力を抜く
- 足全体に力を入れた状態を10秒キープし、ふっと力を抜く
- お尻に力を入れた状態を10秒キープし、ふっと力を抜く
- 肩を頭の方に引きあげるように力を入れた状態を10秒キープし、ふっと力を抜く
- 顔に力を入れた状態を10秒キープし、ふっと力を抜く
これを2、3回繰り返すと体が少し楽になったなと感じられると思います。
4.心を休ませる方法
では次は心を休ませる方法です。
体はなんとかなっても心が休まらないという人は多いです。
まず、心を休ませる時には、物理的に学校や仕事を休むことはもちろん大事ですが、それだけでは休まりませんよね。
人によっては、休んでしまったと落ち込んだり、休んでしまった自分を責めたりもします。
そしてなおのこと休まらないという悪循環にも陥りがちです。
そういう時に、家でじっと寝ていたりすると、どんどん嫌なことが浮かんできて、もっと休まらないなんてことにもなりかねません。
そういう時は、「この時間は休む」と決めて、思いっきり好きなことをしましょう。
学校や仕事を休んでいるんだから家にいなきゃと思うかもしれませんが、
家にいることで休まらないのであれば、外に出て好きなことをするのがいいと思います。
人目が気になる場合は、少し遠くの場所に行くのもいいですね。
4-1.イメージ法
次に紹介したいのがイメージ法です。
【あなたがほっとできる大好きな場所を思い浮かべてください】
そして、目を閉じて座り、その場所にいることをイメージしながら、深呼吸をして下さい。
例えば自然の中が好きな人なら、大きな山脈の麓にある森の中で、湖の前に座っているイメージをします。
森の中なので、鳥のさえずりや木の葉の揺れる音、
魚が水面を跳ねる音、
風の音など、
大好きな場所をできるだけリアルに、本当にそこにいるようにイメージして行うと、
目を開けた時に、心がふわっと軽くなっていることを感じられると思います。
5.まとめ
私達は、頑張ることや自立はよく促されて、それこそが良いこと、大事なことだと教わります。
一方で、休み方や甘え方、その重要性を教わる機会はあまりに少ないのではないでしょうか?
頑張るためには、力を蓄えなくてはなりません。
頑張った後には、しっかり心身を休める必要があります。
「休み方、力の抜き方」「甘えや頼ることの大切さ」をぜひ知っておいてほしいです。
休むことの大切さがよく分からなかったり、休み方が分からないままぐったりしていると、
自分でも「休んでいるのか怠けているのかわからない」状態になり、
「なんて自分はダメなんだ」と自己評価が下がりやすくなります。
よく「頑張りすぎ」と言われますが、そう見える人は「頑張りすぎ」なだけではなく、
「休みたくても休めない、休むってどういうことなのかわからない」のではないでしょうか。
そういう人に、ただ「休む時は休みなさい、それも仕事だ」と言っても、
結局どうすればいいのか分からず、「休むこともできない自分は、やっぱりダメだ」と自分を責めがちです。
そういう人は、まず休むことの意義を学び、休むとはどういう感覚なのか、
どうすれば心と体が休まるのかを、知って頂きたいと思います。
休むべき時にちゃんと休めてこそ、頑張りたい時に力を発揮できます。
この記事で紹介したのはほんの一部の方法です。
ぜひ自分に合う力の抜き方、リラックスの方法を見つけてみてください。