「HSP」という言葉が世の中に広まりつつあります。
本屋さんには、多くの本が並び、ネットでもyahooニュースでも取り上げられたり、テレビで紹介されることも珍しくなくなりました。
HSPのチェックリストや、HSPの概念を提唱したエレイン・アーロンさんが強調する4つの特徴「DOES」などを通して、
自分の取扱説明書のように感じて、「自分の生きづらさの正体がわかった」という喜びの声も、少なくありません。
とはいえ、HSPの説明がすべて当てはまったり、自分のすべてを説明してくれるということは、ありえませんよね。
そこで、HSPにも「当事者研究」が求められてきているように感じます。
とくに「深く考える」ことを得意とするHSPには、相性はいいのではないかと思います。
今回はHSPにおすすめしたい、当事者研究とは何かについてまとめます。
1.なぜHSPに当事者研究なのか?
HSPとは、アメリカの心理学者、エレイン・アーロン先生が提唱された概念です。
Highly Sensitive Personの略で、「ひといちばい敏感な人」や「繊細さん」などと訳されています。
詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
https://yawanon.com/hsp-生きづらい-原因-特徴/
HSPというのは、あくまで「敏感である」という気質であり、生まれてからの経験や体験など、積み重ねてきたことは人それぞれです。
それによって、敏感さがどのように現れるかや、その程度も変わってきて当然です。
HSPは、あくまで「自分を知る」ためのスタートラインであり、入口です。
色々な生きづらさをかかえやすいHSPですが、その「生きづらさ」をひとりひとりが掘り下げ、自分の生きづらさの原因を知れればきっと生きやすくなれると思います。
そのひとつが当事者研究なのです。
2.HSPの生きづらさを客観的に見よう~当事者研究とは~
当事者研究は、もともとは統合失調症の当事者である「浦河べてるの家」の人たちによって始まりました。
その後、当事者研究は、精神疾患だけではなく、比較的周囲に見えにくい困難をもっている人たちの間で広がってきました。
当事者研究の第一人者である熊谷先生は、著書の中でこう言われています。
周囲から見てわかりづらい障害は、自分から見てもわかりづらい」と言われています。
「例えば、小さいころからなぜか周りの人と同じように振る舞えない、あるいは同じように感じられないというかたちで、
名状しがたい差異を経験してきた自覚はあるけれども、いったいなぜそうなってしまうのか、
自分の性格あるいは人格に問題があるのではないか、あるいは努力不足のせいではないかと悩み、自分を責めてきた方が数多くいらっしゃいます。
國分功一郎、熊谷晋一郎 <責任の生成>—中動態と当事者研究より
自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちですが、私たちは、意外と自分のことでもわかっていません。
言葉で説明することも難しいことは多いと思います。
この「自分でもわかりづらい生きづらさ」の正体は何なのか、自分で自分のことを知ることが、生きづらさを和らげることにつながっていきます。
3.当事者研究のキーワード「外在化」とは?
当事者研究をする上での、重要なキーワードが、「外在化」です。
「問題と本人を切り離して、行動を出来事として眺めること」です。
私たちは、何かと「犯人捜し」をしがちですよね。
HSPがつらくなりやすいのは、なにか起きた時に、「自分が悪い」と自分を責めることではないかと思います。
起きた出来事に対して、「自分が悪い」と思ってしまうと、気分が落ち込み、それ以上考えたくなくなりますよね。
同じことにならないように、「悪かった原因を探る」と思っても、どんどん自己嫌悪になりそうで、気が乗りません。
そうならないように、問題と自分を切り離して、起きたことを他人事、単なる出来事として客観的に眺める。
そうやって、免責(自分の責任ではない)と捉えることで、冷静に、分析しやすくなります。
そして、外在化することで、本当の意味で自分と向き合い、卑屈にならずに、責任を引き受けやすくなります。
不思議なことに、一度行為を外在化し、自然現象のようにして捉える、すなわち免責すると、外在化された現象のメカニズムが次第に解明され、その結果、自分のしたことの責任を引き受けられるようになってくる。
一度免責することによって、最終的にきちんと引責できるようになる
(同書より)
4.まとめ
今回は当事者研究とは何かについてまとめました。
次回から、HSPがよく悩んでいる生きづらさはなぜ起こるのか、掘り下げて考えてみたいと思います。