【HSP】敏感さにも2つある

診療をしている中で、

「自分はHSPなんでしょうか?」

「うちの子はHSCでしょうか?」

という相談を受けることがあります。

「人目がとても気になる、他人の顔色が気になってしまう」

「ちょっとした物音でビクッと驚く」

など、敏感さで困っているといいます。

色々と話を聞くと「幼少期からそうだった」という方もいれば、

「昔はそうでもなかった」という方もいます。

HSP/HSCの敏感さは、途中から生じたり、より敏感になったりすることはあるのでしょうか。

今回はそんな敏感とは?というテーマでお届けします。

1.【HSP】敏感さにも2 つある

高木英昌
児童精神科医です。自分を知ることで楽に生きられる人が増えることを願っています。

HSPの話をする時に必ず出てくる「敏感」という言葉。

これだけ聞くと、

  • nonHSPの私でも敏感な所はあるけど?
  • HSPじゃない人は鈍感ってこと?
  • 敏感なところがあるから私もHSPなんだ!

などなど思ったことは無いでしょうか?

敏感というのは、すごく抽象的ですし、敏感な人、鈍感な人と分けてしまう印象があります。

実は敏感と言っても2つあると考えられます。

敏感なところがあるからHSPなんだ!というわけではないのです。

1-1.HSPの敏感さとは?

HSPが悩む敏感さは2つの要素が重なっていることが多いと思われます。

1つが、快不快どちらにも反応する敏感さ

2つに、ある経験を機に、恐怖への警戒からくる不快な過敏さ。

1つめが、HSPからくる生来の敏感さです。

これは「差次感受性」といわれ、うれしいことにも不快なことにも、どちらにも反応する性質です。

  • 気が利く
  • 感動しやすい

という感受性の豊かさとしての反応もあれば、

  • イライラをもらいやすい
  • 人の苦しみに影響されやすい

という生きづらく感じることもあるでしょう。

以前は「ストレスに弱い、傷つきやすい」という「ストレス脆弱性モデル」で考えられていたこともあったようですが、今では、ストレスにだけ敏感に反応するのではなく、うれしいことやポジティブなことにも敏感に反応する良い面もあることがわかっています。

また、外からの刺激だけでなく、体の中の感覚(内受容感覚)への敏感さもあることが知られています。

心臓の動きや、胃腸の動きなども、非HSPよりも細かく感じる人が多いようです。

ちなみに「敏感なことなんて、誰でもあるんじゃない?」という意見もあります。

HSPの敏感さは「いつも」敏感なところに特徴があります。

敏感な「こともある」、敏感な「ときもある」のとは質的な違いがあります。

(少しの間息を止めて)水中にもぐれることもある人間と、いつも水中にいる魚は、呼吸の仕方が違いますよね。

たとえが極端すぎるかもしれませんが、HSPとnonHSPの感じ方は、程度の差はあれど質的に異なるものだと思います。

1-2.トラウマからくる過敏性

2つめは、トラウマによる過敏性です。

ここでは、HSP由来のものは「敏感さ」、トラウマ由来のは「過敏さ」と分けて表記します。

これは、何か恐ろしい経験を機に、恐怖への警戒からくる不快感への敏感さです。

ここでいうトラウマは、狭義のPTSDではなく、強いストレス、慢性的なストレスによる「心のキズ」が残ってしまっている状態とします。

病名でいうと、うつ病や不安障害、適応障害など様々な病態に関係します。

これは、緊張感や警戒感からくる過敏性です。

ジャングルでいつ敵が襲ってくるかもわからない状況だと、常に気を張りますので、神経も過敏になります。

何かあればすぐ逃げられるように、ちょっとした物音にも反応します。これは危険から身を守るための防衛本能からくる過敏さです。

サバイバルモードにいることによる過敏性は、心地よい刺激には反応しにくくなります。

悠長にリラックスして、のんびりしてしまうことは、「油断」と認識され、かえって身を危険にさらす可能性があるからです。

そのため、トラウマによる過敏性の特徴は、不快感ばかりが強く、逆に心地よい刺激には鈍感になります。

2.まとめ〜その過敏性は改善できるかも

このように、HSPからくる生来の敏感さと、トラウマ体験による過敏さは、分けて考えると敏感さへの対処法が見えてくるかもしれません。

前者は基本的には生まれつきのもので、変わらない敏感さですが、後者は安心・安全感を取り戻せれば改善しうるからです。

特に、生きづらさにつながるのは後者の「過敏性」です。

  • 危険じゃないはずなのに怖く感じる
  • よくわからないけど人目が怖い
  • ちょっとした言い方で「否定されている」と感じて委縮してしまう

中立的なはずの刺激も「危険かもしれない」という防衛本能のフィルターが強く影響し、なんでも不安に感じやすくなっているのでしょう。

HSPによる敏感さのため、刺激が多くて「疲れやすい」のはあるかもしれませんが、色々なことが「怖く感じる」のであれば、それはトラウマによる過敏性かもしれません。

感覚が敏感だと、良くも悪くも強く記憶されやすくなるため、トラウマとして残りやすくなります。

そのためHSPはトラウマを抱えやすいので、両者を区別するのが難しいこともあるかもしれません。

HSPだから生きづらいんだと諦めてしまわずに、まずは、その敏感さはどこからきているのか、一度振り返ってみるといいかもしれませんね。