HSPは気にしすぎなのではない。科学的に証明されていることとは?

HSP/HSCは、日本でもだいぶ広まってきましたが、「ひといちばい敏感」とはどういうことか、まだまだ誤解も多いのが現状です。

よく言われるのは、「気にしすぎ」とか「神経質」などですが、HSPの敏感さは、「気持ちの問題ではない」というのが、この「HSP」の概念を知ることの大きな意義の一つです。

そして、この「ひといちばい敏感」ということは、脳科学でも証明されていることです。

診察でも「科学で証明されているといわれると、自分の気にしすぎじゃなかったんだなと思えて有難いです」といわれることがあります。

では、脳科学ではどんなことがわかっているのでしょうか。今回はその辺を掘り下げてみようと思います。

1.HSPは気にしすぎなのではない。科学的に証明されていることとは?

高木英昌
児童精神科医です。自分を知ることで楽に生きられる人が増えることを願っています。

まず、HSPの敏感さは 学術文献では、「差次感受性(differential susceptibility )」や、「敏感性感覚処理(sensory processing sensitivity:SPS)」と呼ばれています。

敏感性感覚処理とは、生物学的(脳科学的)に、環境への注意力・気づきや感受性が高いことを表す用語です。脳がどれくらい反応しているかを血流の程度で可視化する検査(fMRI)などで、HSPは非HSPと比べて反応が高いことがわかっています。

まだ未解明の部分は多いですが、特に報告が多いのは、脳の「島皮質」と呼ばれる部分です。

ビアンカ・アセヴェドによる研究で、HSPと非HSPが、それぞれ知らない人と親しい人の写真を見た時の脳の働きを調べたところ、ヤゲロヴィッチの研究結果と同じく、HSPは非HSPより精巧な認知をしているだけでなく、脳内の「島」と呼ばれる部位が活発に働いていることがわかりました。

(この部位は、その時々の内面状態や感情、体の位置、外部の出来事といった情報を統合して現状を認識するので「意識の座(seat of consciousness)」と呼ばれることもあります)。HSCが自分の内や外で起こっていることを、人よりよくわかっているとしたら、その時は、脳のこの部分が特に活発に働いているのでしょう。

(エレイン・N・アーロン、「ひといちばい敏感な子」)

難しいのでちょっと解説します。

2.「感覚」と「感情」はつながっている

この島皮質は、脳と身体の「インターフェイス」とか「ハブ」といわれます。脳と体の情報をまとめているところです。

「自分」という意識(心)は、体の内外の感覚があるから生まれるというわけです。

身体の感覚は、様々な感情と密接な関係があります。体が疲れていればイライラしたり、落ち込んだり、うつっぽくなったりします。

お腹が空いていたり脱水になったりして体に余裕がないときも、感情は不安定になります。つまり、体の感覚に敏感であることは、感情の振れ幅が大きいこととつながるわけです。

HSPは内受容感覚も敏感であることは、以前の記事にも書きました。

HSPの当事者研究②身体感覚にも敏感?!

心や感情は、私たちが思っている以上に、体の状態から影響を受けているんですね。

心が落ち着かないときは、まずは体が疲れていないかを見直してみることがいかに大切かわかります。

3.HSPは「自分」を意識することが多い

五感の処理の敏感さは、外界からの影響の受けやすさですし、内受容感覚の敏感さは体内の刺激にも影響を受けやすいということです。そして、それらの情報を統合する脳の部位が「島皮質」です。この島皮質は「意識の座」ともいわれます。

脳の中の様々な情報(感情や思考、外界からの刺激や情報)と、内受容感覚(内臓感覚)とを多感覚統合(mutimodal convergence)することで、「自己感(sense of self)の本体」をなしているとも言われます。

これは、どういうことでしょうか。

私たちは、普段は自分が考えていることを意識していない時間がけっこうたくさんあります。ふと気がついたら時間が経っていたり、寝ていたり。ようはボーっとしている時間です。

そういう時は、「刺激」によって、ハッと我に返ります。もっといえば、刺激の「変化」に気づくと、自分を取り戻します。

これは、刺激に敏感であり、些細な刺激の変化にも気づきやすいほど、「自分」を意識する機会が増えることを意味します。

この論理から考えると、HSPは非HSPよりもボーっとしている時間は少ないはずです。常に何かを考えていたり、気にしていたりしないでしょうか。ボーっとするのが苦手、ボーっとしたくてもできない、という声も聞きます。これもまた、HSPが疲れやすい、気が休まりにくい一因にもなっているのかもしれません。

4.まとめ

今回は、HSPは脳の「島皮質」が活発という研究から、体の感覚の敏感さと、感情という気持ちの敏感さ、そして内外の刺激の多さや、感情の振れ幅の大きさなどから、「自分」を意識することも多いというHSPの特徴が見えてくることをまとめてみました。

これらHSPの特性を知ると、自分にとって不快な刺激を減らす大切さや、ちょうどよい心地よい刺激を増やすことの大切さが一層知らされてきますよね。情報過多になりやすい現代においては、社会全体の課題でもあるような気もします。

それだけ刺激を受けているんだとまず自覚して、休む時間を積極的に取って欲しいと思います。

【参考文献】

エレイン・N・アーロン、「ひといちばい敏感な子」