HSPは全員発達障害の可能性とは本当なの?

つい先日、熊本大学大学の教授の菊池哲平先生の『HSPと発達障害は区別可能なのか』【1】という論文が出ました。HSP当事者として、HSP関連の研究にはとても興味深く見ている一方で、論文が出ましたという文字を見つけるたびにドキッとしているのも事実です。

それはなぜか、また今回の研究結果についてどう思っているのか、HSP当事者の私と、HSPも発達障害もみている児童精神科医の夫と話をしてみたので、今回はその記録になります。

1.HSPは全員発達障害の可能性とは本当なの?

今回の研究では、HSPチェックリストで高得点の人の全員に、発達障害のチェックリストでも発達障害の傾向が見られた為、HSPのみの人はいなかったという結果でした。

これを見た時、まず最初に「え?」と思いました。なぜなら、私はHSPですが、知り合いにはHSPの人、ASDの人、ADHDの人がそれぞれいて、みんな特性が全く違うよねと思っていたからです。

また同時に、ドキッとしました。それは、『生きづらいHSPのための、自己肯定感を育てるレッスン』の本中でも、発達障害とHSPは異なると書いたし、HSPのお茶会でもそう説明してきたからです。

間違ったこと言っちゃってた?とドキッとした訳ですね…。

もちろんこれは、アーロン先生がHSPと発達障害は違うと言われているからそう書いたんですが、今後変わるのか?と。

もしそうなら、今年再開するHSPのお茶会でも言うことが変わるし、とちょっと焦ってきたので、夫に意見を聞いてみることにしました。

2.現場ではHSPと発達障害は別物

HSP 妻
この論文読んで、ちょっと動揺してるんだけど、夫くんはどう思った?
児童精神科医 夫
チェックリストで調べればこういう結果にもなるかな、って感じかな。
HSP 妻
へ?なんで?(私がこんなに動揺してるのに笑)
児童精神科医 夫
この研究はチェックリストで判断されてるんだよね。チェックリストって、「こういうことありますか?っ」て選ぶでしょ。そうするとある程度、誘導されちゃうし。
HSP 妻
あー、ちょっとでもあるかな?と思うと、ハイをつける人もいるだろうしね。
児童精神科医 夫
うん、そういうこともあるよね。チェックリストはあくまで主観だから。でも、外来で色々詳しく聞いてみると、どういう意味でその言葉を使ってるかは人によって違ったりするんだよね。例えば『一度にたくさんの事が起こっていると不安になる』のも、HSPとASDだと、不安の内容は違うはず。前者は考えることが増えすぎて対処できなかったらどうしようっていう不安じゃないかな。後者は情報が多すぎて頭がフリーズしてしまうために分からなくなる不安になりやすい。ちなみにどちらでもない内向型の僕も、これは当てはまるし。でも、このチェックリストの聞き方だと、不安の中身が違っても同じになっちゃうよね。細すぎるのも大変だから、そこはチェックリストの限界だと思うけど。

そういう意味でも今回のは、チェックリストを使用して研究したら、こういう結果がでましたよってだけ。

僕としては、チェックリストでこういう結果が出るって言うのは、むしろそうだろうなって同意だよ。

HSP 妻
ん?どういうこと?
児童精神科医 夫
実際に一人一人の話を聞いてきた経験からは、HSPのチェックリストで高得点だったけど、ASDって人はけっこういるんだよ。だから僕はチェックリストは使うけど、あくまで参考資料であって、それだけでHSPとは判断しない。
HSP 妻
夫くんの現場レベルでは、HSPと発達障害は違うってスタンスなの?
児童精神科医 夫
うん、違うと思ってる。
HSP 妻
なるほど。じゃあ今回の論文の対象者みたいに、どっちかわからない人はいるの?
児童精神科医 夫
すぐにはわからない人はいる。グレーゾーンみたいな。トラウマを抱えていたり、不安が強いとわかりにくくなることもあるしね。この論文にも書いてあるけど、不安が強いと感覚過敏になるから、いま感覚が敏感で困ってるというだけでは判断できないんだよ。

HSP 妻
なるほど、どっちか分からない人はいそうだよね。

ネットにたくさんあるHSPのチェックリストだけでHSPだと思うのは良くないかもってことかな。色々困ってて、ASDの診断がついた方がいいことも多いだろうしね。

でもチェックリストではわからないとなると今HSPのチェックリストで高得点だからHSPだと思ってても実は違ってたってこともあるんやよね。

児童精神科医 夫
そうね。だから、HSPではDOESの理解が大事になってくるんじゃないかな。
HSP 妻
うん、そうなるよね。チェックリストとDOESをよく理解する必要はありそうやね。

まぁそもそもHSPって慎重派だから、HSPのチェックリストで高得点が出たからってHSPだと思う人はあんまりいないと思うしね。本当にそうなのか、調べて調べて調べ尽くして、あぁやっぱりそうだったんだってなるしね。

HSPにしても、ASDにしても、最後は本人の自己理解できる方に落ち着くって感じかな。でもこうやってHSP関連の研究が増えるのは当事者としてはありがたい。今後の研究を楽しみに待とうか

3.まとめ

今回は、こんな感じで夫と話してみたことをまとめてみました。

HSPは病名では無いため、人から診断されるものでは無いですよね。だからチェックリストで判断する人が多いと思いますが、チェックリストは簡便なのがメリットですが、厳密さには欠けるデメリットもあることも知っておかないとなと思いました。

そもそも、HSPかどうか、ASDかどうかは、自己理解を深める一つのきっかけであって、HSPだからこう、ASDだからこうと型にハメるものではないはずです。

HSPにしても発達障害にしても、またHSPでも発達障害でない人だってみんなそれぞれ違いはあるし、他と違うから責められるんじゃなくて、どんな人でも困っているときには手を差し伸べられる世界になっていくといいなと思います。

アーロン先生のDOESの理解も進めつつ、この辺りもHSPのお茶会でやっていきたいなと。これからも色々な研究を楽しみに待ちたいと思います。

【参考文献】

【1】菊池哲平,『HSP と発達障害は区別可能なのか?』